大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)316号 判決 1969年5月29日

当事者 上告人 岩橋四郎

右訴訟代理人弁護士 中島忠三郎

繩稚登

被上告人 梅原次郎

主文

原判決および第一審判決中、被上告人の所有権保存登記抹消登記手続請求に関する部分を次のとおり変更する。

上告人は被上告人に対し、別紙目録記載の建物につき、昭和二八年八月一五日東京法務局文京出張所受付第一二〇五九号所有権保存登記を、上告人および被上告人が各二分の一の持分を有する共有保存登記に更正登記手続きをせよ。

被上告人のその余の請求を棄却する。

上告人のその余の上告を棄却する。

訴訟の総費用は、第一、二、三審を通じてこれを三分し、その二を上告人の、その一を被上告人の各負担とする。

理由

上告代理人中島忠三郎、同繩稚登の上告理由第一、第二点について。

原判決の挙示する証拠に徴すれば、本件建物部分が上告人および被上告人の持分各二分の一の共有に属する旨の原審の認定、判断は肯認するに足り、その判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、要するに、原審の専権に属する証拠の取捨・判断、事実認定を非難するものであって、採用しえない。

しかし、職権をもって按ずるに、共有者の一人の単独名義でなされた所有権の登記もその者の持分に関しては実体関係に符合するものであり、他の共有者は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するにすぎないのであるから、後者は登記を実体的権利関係に符合せしめるためには、名義人に対し自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続を求めることができるにとどまり、その全部の抹消登記手続を求めることはできないものと解すべきであって(当裁判所昭和三五年(オ)第一一九七号同三八年二月二二日第二小法廷判決、民集一七巻一号二三五頁参照)、この理は、抹消される登記が所有権移転登記でなく保存登記であり、かつ、第三者のための登記が存在しない場合でも、同様であるというべきである。

しかるに、原審および第一審判決は、これと趣旨を異にし、被上告人の上告人に対する反訴請求中、被上告人の本件建物部分に対する前示共有持分に基づき上告人単独名義の所有権保存登記の抹消登記手続を求める部分の請求を全部認容しているのであって、失当というほかはない。そして、被上告人の右請求は前示共有持分に応ずる更正登記手続を求める申立を包含するものと解しうるから、その限度でこれを認容し、その余の請求を失当として棄却すべきである。

よって、原審および第一審判決中被上告人の右反訴請求に関する部分を右の趣旨に変更し、その余の部分に関する上告を棄却すべきものとし、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九二条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)

上告代理人中島忠三郎、同繩稚登の上告理由<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例